2022年11月頃 新たなマウスを購入した。
非常に優れたデザインと完璧と思われたカタログスペック。しかしながら何故かSNS上にはレビューが極端に存在しない。密林の奥地で見つけた宝は中身のない模造品であった。
要約
HPのデザイン部門と設計部門の軋みが伝わってくる製品である。ハード・ソフトともに致命的な欠陥が見られ、値段的にお得に見えるがニッチすぎて需要が少ない。倍以上払ってでも素直に別のマウスを買うべきである。
候補のマウスを探す話は以下
この記事が数少ない完璧なモバイルマウスを求める人の一助となれば幸いである。
付属品・特徴・長所
購入を前に要件を満たす様々なマウスを探したが、ここまでデザインで優れたマウスは見たことがない。
外観は素晴らしいの一言。溢れ出る高級感ながら表面に使用されている素材はプラスチックなので、触った時の安っぽさは否めない。しかしながら相対的にそう感じるだけなので、気にすることはない。
ホイールは金属が使用されており、冷たさから感じる高級感が◎。
大きさと外観比較にLogicoolのMX Anywhere 3S、M590を用いる。
Logicoolは足し算、HPは引き算に重きを置いていることがわかる。
乾電池式だと入力ポートが不要なためデザイン面で有利になる。
付属品は本体、USBレシーバー、乾電池2つ、本体を収納するための布ケース。
ケース付きは好印象。ロゴが入っているのも良い。
ケースの出来が良い。入り口付近はプラスチックか何かで硬く、磁石が内蔵されているためきちんと閉まる。よく出来た作り。
上記の写真では乾電池は別のものに交換しているが、標準ではEnergizer製のものが付属。使用する乾電池は1つでも良い。
HPが提供しているHP Accessory Center (以下HPAC)を使用することでボタンのカスタマイズが可能。他社に引けを取らず優秀であり、UIもデザイン面で洗練されていてやる気を感じる。
マイナーチェンジ版710との違い
710を所有していないのであくまで推測に基づくが、おそらく大きな違いは給電方式と本体色の違いである。その他細かな違いとしてバッテリーランプの点灯方式や電源ボタンの位置などの変更がある。
短所
・USBレシーバーが気に食わない
・iPadでまともに使えない
・電池持ちが微妙
・左右クリックが微妙(解決策有)
・接続が切れる
・配信されているのにMacでアプリが使えない
不安になるレシーバー
USBレシーバーが他社のものよりも長く、その分細くなっている。見た目こそ面白く差別化できていると感じるが、実用性では疑問が残る。
他社より長い分ラップトップに差しっぱなしにして運用する場合、当然ながら端子に負担がかかりやすくなる。このマウス自体静音かつコンパクトなものである以上、コンセプトとしては持ち運びを前提としたマウスのはず。ならばレシーバーは可能な限り小さくするか、3台マルチペアリングの内訳をBluetoothのみで賄うようにするべきではないか?
iPadは想定されてない
「PC Mac行けるならiPadでも当然行けるやろ!」くらいのノリで購入したが大誤算。
iPadにペアリングすること自体は可能でフリーホイール等含めて動作にはなんら支障はないのだが、一度マウス側でペアリング先を変更したりマウスの電源を切ると自動的に再接続されない。
商品説明欄にはiPadに関する文言は記載されていないのでHPを責めるのはお門違い。iPad非対応とはどういう意味なのかいい勉強となった。
(余談だがAndroidでも同様の挙動をする)
電池持ちが悪い
乾電池を2本使用できるにも関わらず電池持ちがイマイチ。
「乾電池式は本体が壊れない限り使えるからお得」という理論は635において通用しない。ランニングコストがかかりすぎる。
以前使っていたLogicoolのM590では2年間使用した中で電池を交換した記憶は1回しかないので、最適化による差なのであろう。
左右クリックが微妙
695は上面全体が外れるため構造的に端の方ほど押し心地が微妙になる。具体的には橋に行けば行くほど入力の境が曖昧になり、押した際にプラスチック同士の擦れた感覚が伝わってくる。
ただこの2つの問題自体は解消可能で、天板側にガムテープの切れ端などを貼り付けることで入力・押し心地ともに解消される。
ただよくよく考えるとこの問題は開発段階で見逃される訳のないわかりきった問題であり、なぜHP側で例えばゴムやクッション等をつけて解消しなかったのかは甚だ疑問である。
致命的に接続が切れる
筆者は普段同じHP製のVictus 16(intelモデル)に接続しValorantというFPSゲームをプレイしている。
毎日2時間程度プレイする中で、1週間に1回ほど完全に接続が切れる症状が発生する。
これが非常に厄介で
・マウスの電源を切ってつけても反応しない
・他のマウスをパソコンにつなげてもValorantの視点は動かない(Valorantの仕様?)
・Valorantを再起動しても反応しない
・パソコン自体を再起動すると反応する
という、トロール確定な症状なのである。
また、1~2日に1回程度1秒ほどマウスの入力が遅れて反映されることがある。こちらの問題はM590(Bluetooth接続)でも時たま発生していたため、635自体の問題とは断定できない。
同じHPで揃えているため考えにくいがおま環の可能性は否定できないのであしからず。
MacでのHPACがわかりにくい
PCメーカーながらMac向けにきちんと配信することに感心するのも束の間、実はこのアプリはインストール自体はできるが立ち上げることができない。
立ち上げようとクリックすると一瞬ながらHPのロゴが表示されるが、その後すぐに消え、何度クリックしようと立ち上がることはない。
アクティビティモニタ上では動作が確認できるため、「立ち上げようと試行しているが何らかの問題が生じ永遠と立ち上がらない」というのが正しい。
ちなみにアクティビティモニタ上で動作を強制停止させもう一度クリックすると同様の挙動をとる。
Mac側の再起動やOSのアップデート、アプリの再インストール等を試すも解消せず。
同じ機種でないながらも同じMac上でのHPACの動作不良は報告されているため、純粋にアプリがポンコツなのであろう(ネット上の情報が少なすぎて判断材料に欠けるが)。
....と、数ヶ月間思っていた。
ふと画面上方に目を向けると
...見たことあるアイコンがある。立ち上がっていないのではなく、ウィンドウが表示されていないだけだった。
至って正常に動作するじゃないか。わかりにくいよHPさん。クリックしたら素直にウィンドウを表示してくれや。
マイチェン版の710ではどうなのか
余談だが710について見てみると
App Storeに関する文言が記載されていない。マイナーチェンジで非対応になったのかと思い説明書を見てみると
App Storeに関する記述がはっきりと記載されている。ややこしい表記はやめてほしい。
総括
よほどのことがない限り635はお勧めできない。乾電池から内蔵バッテリーに変更され電池持ちが改善されているという希望的観測のもと710を購入することは悪くないと思う。
ただ同時に考えなければならないのが710は「HPの製品」である。Logicoolではない。すなわち消費電力の最適化については雲泥の差を考慮しなければならない。
つまるところ、原石止まりのダイヤに価値は見出せないのである。HPが磨く努力をする日は来るのだろうか。